「自分の好きな音楽」vol.1 (Dream Theater)
↓↓↓時間がない人向け↓↓↓
僕はDream Theaterというバンドが好きです。一曲がとても長いのですが、その分一曲を映画のように表現できるのでとても芸術的だからです。
↓↓↓アホみたいに暇な人向け↓↓↓
僕は小学生の頃にイギリスの伝説のロックバンド「Queen」を聴いてどハマりしました。Vo.のフレディ・マーキュリーがカッコよくていつも"Somebody to Love (live at the Bowl ver.)"をピアノで弾き語っていました。もともとピアノが弾けなかった僕はQueenを聴いて頑張って耳コピをして次第に弾けるようになりました。今でもQueenしか弾けません笑。
さて、小中学時代をこのように過ごした僕ですが、今思い返すと僕がQueenに惚れた最大の理由は「既成概念に囚われない自由な表現」です。
……月並みな理由ですね、斬新なものを評価するときのこの表現が既に既成概念に囚われてるみたいでとても嫌なのですが、僕にはこういう他ないです。
Queenというバンドはご存知の通り、ロックバンドにも関わらず曲中にオペラをはさんでみたり、自転車の鈴をたくさん鳴らしたり、フラメンコギターを入れてみたり…。別に一曲を通してそういったコンセプトがあるならともかく、急にガラッと曲調を変えてきやがる。当時の僕はその自由さ、大胆さに惹かれたんだと思います。
ただ、Queenの凄いところはここまで暴れてるにも関わらず、楽曲として非常に聴きやすい事だと思います。
いろんな要素を盛り込んだ曲を作ろうと思うとどうしてもまとまりが無くなり、内なる自分を着飾らず表現しようと思うと意外と一辺倒な聴きどころのない曲ができたり、それを恐れて逆に理論やら聴き手を意識するとどうもキャッチーな曲になってしまう…、僕の体験談でもあります。 その点Queenはオペラを入れてるのに、自転車の鈴を鳴らしまくっているのに、急にフラメンコギターを始めるのに、何故ここまで違和感なく聴けるのか。攻めと守りのバランスが実に丁度いいんだと思います。こればかりは作曲者の攻守のセンス、好みがたまたま丁度いい塩梅だったのでしょうね。そんなセンスの持ち主になりたかったものです。
Queenの壮大な大曲を3つ、ご紹介いたします。
言わずと知れた大名曲ですね。 綺麗なコーラスから静かにバラードが始まり、泣きのギターソロで盛り上がり最高潮!次は…オ、オペラ!?…びっくりですね。なぜここでオペラなのか、さらにその後のハードロックパートにしっかり繋がってて、またバラードに戻る…。展開もすごいし、展開間のパスが上手すぎますね。
2.The March of the Black Queen
2ndアルバムからの一曲。重いピアノのオープニングから一転、分厚いコーラスの緊張感のあるパートから急に明るいパート、突如静寂…からのハードロック、そしてエンディング…。 ミュージカルでも見てるかのような怒涛の展開、しかしこれもまた一つの物語を曲として飽きることなく聴くことができる素晴らしい楽曲。Bohemian Rhapsodyよりも前に作られた曲であり、2ndアルバムのジャケットがBohemian Rhapsodyのオペラパートで再現されている事からも、この曲がBohemian Rhapsodyの元と言えるでしょう。
3.innuendo
Vo.フレディ・マーキュリーが病で弱っていく中で製作されたラストアルバム。本当に死にゆく人間が歌っているのか疑うほどの力強い声には一言、素晴らしいとしか言えません。ドラムロールからカウントで始まるこの曲はとても重く荘厳な雰囲気ですが、突如始まるフラメンコギターソロには驚きました。そして三拍子の美しい歌に続いて5拍子の迫真のエレキギターソロ、鳥肌が立ちます。最後はハイトーンのコーラスで〆。このラストアルバムは泣きながら聴いた記憶があります。
この記事の"忙しい人向け"を読んだ方は「あれ、Dream Theaterってバンドの話をするんじゃないの?Queenの話しかしてないよ?」と思っているでしょう。そんなこと忘れてた人もいるでしょう。
ここから"Dream Theater"というバンドについて語ります(以上1824文字、以下3837文字)。
Dream Theaterというバンドは前身バンドのMajestyが改名をして1986年に活動を始めたアメリカのプログレッシブ・メタルバンドです。 「プログレッシブ・○○バンド」は先進的、新しい事をやるってことです。雑に説明すると、「ありふれたキャッチーで退屈な音楽と俺たちの音楽とは違うんだ!」という事を見せつけるバンドってことですね。Queenもそんな感じです。
Dream TheaterはRushやKing Crimson、Yesなどのプログレッシブ・ロックバンドとMetallica(洋服メーカーではない)やIron Maidenなどのメタルバンドから影響を受けているバンドであり、メンバー全員がバークリー音楽大学に在籍していたという凄腕バンドです。バークリー音楽大学にいたのにメタルやってるの?って思いますよね。僕も思います。現キーボードのジョーダン・ルーデスは9歳からクラシックをガチで学び始めたにも関わらず、メタルの世界に降り立ってぶっちぎりの腕前で「キーボードの魔術師」とまで呼ばれています。
Dream Theaterの楽曲には尺が長い曲が多く、1曲24分というバカみたいに長い曲もあります。また、変拍子を多用するのも特徴で、初見ではノることができない曲がほとんどです。因みに変拍子とは拍子を変えることで、変な拍子という意味ではないので注意しましょう。 百聞は一見にしかず(この状況だと百見は一聞にしかず)ですので、まずはこの曲を我慢して聴いてください。
Metropolis—Part I “The Miracle and the Sleeper”
9分半もあるこの曲はDream Theaterの代表曲の一つです。全てが長いです。歌に入るまで2分弱かかるし。しばらく聴くと曲調がガラッと変わりインストパートへ突入します。ノれない、全くノれない。速いギター、ノらせてくれないドラム、音の多いベース、ギターとハモるキーボード…。そして歌に戻る。
こう書くとネガキャンしてるのではと思われてしまいますが、でもこれが第一印象です。しかし裏を返せば、たかが第一印象なんです。
一回じゃよくわからないので何回か聴き直すと、面白いことに評価が変わるんです。
イントロは確かに長いですが、ただ長いのではなく、イントロの中に展開があるんです。鈴の音と重いギター、バスドラムの4分打ちで徐々に盛り上げ、一気に解放されたかのように演奏が始まり9分半の物語の幕開けです。開放感のあるイントロから一転、重いリズムで歌へ繋げます。
どうですか?長いイントロにも意味があるんです。
歌がはじまるとメタルバンドとは思えない透き通るハイトーンボイスで歌い上げます。そしてインストパート。速いギター、ノらせてくれないドラム、音の多いベース、ギターとハモるキーボード…かっこいいんです。印象に残るフレーズをギターとキーボードが奏で、変則的な拍子と決めでメリハリをつけ、各パートのソロで魅せる。
特にインストパート後半の3,5,7拍子を織り交ぜたキメの嵐は歌えるようになるととても気持ちがいいんです。こういった変拍子を覚えて口ずさむと、4/4でノり続けるよりもより楽しく気持ちがいいものなのです。
さあ、楽しみ方がわかったところもう一曲聴いてみましょう。
In the Name of God
14分越えでビックリしましたね。でも一回通して聴いてみましょう、楽しみ方はもう知っているので!
クリーンギターから始まり、突然歪んだギターリフと重いリズムでこのバンドがメタルバンドである事を思い出させてくれます。歌が入ると先程の透き通る声とはまた異なるキレのある力強い声で曲をよりヘビィにします。そして頭をふりながら聴いているとサビで突然だけど6/8拍子に変わります。演奏はヘビィ、でもコーラスはとても綺麗で曲の印象をより複雑にします。
しばらく聴いていると、うねるようなベースラインで緊張感のあるパートへ移ります。よりダークなパートへ移行しギターもドラムがかき回します。突如、アラビアンな音階で複雑なキメがあったかと思うとギターとキーボードの無限6連符地獄。それを支えるベースラインもカッコいい。軽快なパートではあるが、そこには音符の嵐、とんでもないギャップですね。そしてメインリフに戻り、楽曲のピークを迎える。ここまで聴いたからこそ、この展開に鳥肌が立つ。そして、壮大なアウトロでこの長い物語を〆る。
さて、なんとなくDream Theaterについて分かってきましたか?
ここまでついて来れた方は少なからずこの手の音楽に耐性がある、又は魅力を感じる方です。 ですので、最後、この曲を皆さんとともに聴いて終わりたいと思います。覚悟してくださいね。
Six Degrees of Inner Turbulence
はい、42分の組曲です。
冗談抜きでこの組曲がDream Theaterで一番好きで、一番聴いてます。 この曲は6つの精神病についての歌です。残念ながら完全な和訳がないので、ニコニコ動画の字幕職人が書いていた内容をもとにまとめながら解説します。
Ⅰ.Overture
Overtureとはいわば音楽の目次です。1つ公演で演奏する曲のフレーズを使って一曲にまとめたものです。つまりこの曲にはこれから聴く曲のフレーズが入ってるわけです。メタルバンドですよね?オーケストラの公演ですか?
ギター、ベース、ドラム、キーボードでメタル版オーケストラみたいなことやってますね。バンドサウンドならではの迫力とオーケストラサウンドの壮大さがとてもマッチしています。7分弱あるこの曲も、終盤になるにつれて物語の始まりを示すかのように、聴き手をワクワクさせてくれます。そして、最初の曲が始まる…。
Ⅱ.About to Crash
爽やかで綺麗なピアノフレーズから一斉に演奏開始。物語が始まるんだ…!と鳥肌が立ちますね。7拍子を感じさせない爽やかで聴きやすい楽曲ですが、鬱病について歌っており、小さな村で生まれた少女はすくすくと育ちますが、鬱病を発症してしまい落ちていくという悲しい内容になっています。歌詞だけでなく楽曲でもそれが表現されていて、爽やかな印象から次第に雲行きが怪しくなります。そして、グッとテンポを落として泣きのギターソロ。彼らにかかればテンポも自由自在なんですね…。
Ⅲ.War Inside My Head
突如ツーバスが鳴り響き、不安な曲調でメタルパートが始まります。頭の中の戦争、PTSDについての歌です。まさに戦争によるトラウマを抱えた人間の脳内を彷彿とさせる楽曲です。Vo.のがなるような声が印象的です。
Ⅳ.The Test That Stumped Them All
またもやメタルパートですが、さっきよりもさらに激しくテクニカルになっています。統合失調症について歌っており、サビの掛け合いのような声は統合失調症患者を診る医者と看護師の会話になっています。後半はインストパートで、ダカダカダカダカダ!ダカダカダカダカダ!と印象的なフレーズで緊迫した印象を受けます。そして、最後のラッシュで前半戦終了…。
Ⅴ.Goodnight Kiss
赤ちゃんの声と、それに応えてキスをする母親。静かで、哀しげのある歌声は産後鬱について歌っています。なによりこの美しく煌びやかなピアノはこのバンドがメタルバンドであることを忘れさせます。そして、約3分間のギターソロ。前半はエモーショナルなソロ、後半は少し緊迫したソロ。心電図の音や笑い声、叫び声が不安を煽ります。
Ⅵ.Solitary Shell
そんな不安から一転、12弦ギターの澄んだ、爽やかな音はどこか悲しくも晴れ晴れとした印象を与えます。しかし、歌詞はなんの変哲もない男の子が人を段々と拒むようになり、閉じこもるようになってしまうという自閉症について書かれており、そのギャップがこの楽曲を強く印象づけます。この曲の間奏はDream Theater史上最も美しいと思います。ギターとキーボードのソロがとても綺麗です。
Ⅶ.About to Crash (Reprise)
真っ直ぐでパワフルなリフでギターがブレイクを破り、ハードロックのパートが始まります。そしてどこか聴いたことのあるサビのメロディとタイトルは、2曲目を踏襲しています。実はこの2曲で双極性障害(躁鬱)を表していたのです。この曲はとにかく元気に溢れた印象ですが、それも躁鬱の症状なのです。後半のインストパートはとにかく忙しい。各楽器が入り乱れて複雑な心境を表しています。
Ⅷ.Losing Time / Grand Finale 最後はとても壮大に、まさにグランドフィナーレといった曲です。この曲は解離性障害について歌っており、次第に自分の精神が自分自身と解離し、記憶や人格が不安定になっていくというものです。嘆くような歌声と壮大な演奏はこの長く哀しい物語を締め括る一曲です。最後はとても長く尺を取って、じっくり余韻を味わいます……。
さて、お疲れ様でした。
Dream Theaterは細かいところまで非常にこだわっており、聴けば聴くほど新たな発見がある素晴らしいバンドです。
もしこの記事を読んで音楽をより楽しめたらいいなと思います。
閲覧ありがとうございました。
執筆:ねぎとむ
文責:発地