横国軽音の日常

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軽音楽的読書のすゝめ その一

私も皆に倣い、ブログに文章を書いていこうと思う。私がこの文を書いている理由は至って簡単である。「音楽家の物書きってかっこよくね?」この一点に尽きる。そのため、かっこつけた書き方になることをご容赦いただきたい。

古来から音楽と文章は親和性が高く、多くの物書きが音楽を嗜み、多くの音楽家が物を書いてきた。かの新本格ミステリー作家、綾辻行人や推理作家、島田荘司もギターを弾くし、クリープハイプ尾崎世界観SEKAI NO OWARIsaoriは小説を出版、電気グルーヴも22年に及ぶ連載をもっている。私も例に漏れず、本を書くのも読むのも大好きで、小さい頃からミステリー小説を読んだり書いたり構想を練ったりしてきた。今思えばこれほど使い古されたトリックはないのに目を輝かせて自分は天才だと思ったものである。

さて、私がこの文章を通して伝えたいことは「音楽家こそ本を読もう!」ということである。文章を読むことは作詞に役立つのはもちろん、その表現方法は音楽を演奏する際にも役立つものがあると思っている。そこで、僭越ながら毎回一冊の本を取り上げ、紹介していきたい。毎回といっても私の忍耐力では次回があるかどうかわからないから、今回も早速一冊紹介しよう。

 

今回紹介するのは、恩田陸の『蜜蜂と遠雷』である。直木賞本屋大賞をダブル受賞して話題になり、昨年松岡茉優さんや松坂桃李さん出演で映画化された作品でもあるので知っている方も多いだろうし、読んだ方もいるかもしれない。

この物語はピアノコンクールを舞台として、風間塵、栄伝亜夜、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、高島明石の四人をはじめとする年齢も性格も背景もピアノの実績も異なる参加者の関わりと内面を描いた小説である。若く才能豊富なピアニストとして描かれる人物もいれば、年齢的にこれが最後のコンクールと決めて努力する人物もいるなど、才能とは、天才とは、音楽とは何かを丹念に描いた作品である。

私がこの作品で心を動かされたのは、音楽の描写である。私はクラシックには疎いが、それでも文章を読みながら音楽が聞こえてくるような感じがした。また、その音楽からその演奏者の内面までうかがい知ることができたような気がしたのである。とにかく音楽の表現が素晴らしく、自分の音楽もこのように人の心に届けたいと感じた。また、また、文章ですら音楽をこんなに丹念に伝えられるのに、自分の鳴らす音が音楽を伝えられていないということに気づき、とても悔しくなった。もっと音楽をやりたい、もっとあらゆる音楽を知りたいと思わせてくれる作品である。是非読んでほしい。前述したように、映画化もされていて、私も拝見した。こちらでは文章で一度体験した音楽を音として体験できるという素晴らしい経験ができた。こちらも是非観てほしい。

 

文責:滝本